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すると説明を聞いているのかいないのか。ぶすっとふてくされたように黙り込んでいた小田桐が突然、樋山くん、と呼んだ。
「はい、なにか」
「気が変わった、この話はもういい」
「そうですか」
俺はやっぱりな、と心の中でため息をつくと、持って来たカタログを回収し立ち上がった。
別のメーカーに切り替えるというならそうしたらいい。需要のある客だからって媚びると思うなよ。
俺はテーブルを蹴り、八つ当たりする小田桐に背を向けると部屋を出た。
なんなんだ。あいつは。俺になにを言わせたかったんだ。
俺の口から愚痴でも零させて、今の自分を正当化したかった?あの時の選択は間違っていなかったと、自分に言い聞かせたかった。そんなところか?
ようは今の生活に、パートナーに満足していないのだろう。残念な人だ。
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