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「ごはん食べたの?」
「はい。さっきS大の人と一緒に例の案件の打ち合わせも兼ねて」
「そっか。大変だったね」
相変わらず忙しく飛び回っているんだな。
「明後日、本契約に行くので、佐和さんも同行してくださいね」
「うん、わかった。それでむこうは……」
「仕事の話はおしまい」
「え?」
勝手に話をぶった切ったかと思えば、強引に引き寄せられた。不意に胸の中に閉じ込められて心臓が急速に早鐘を打ち始める。しかもほのかに香るシャンプーの香りにさらにキュンとしてしまう。
「今からはプライベートモードです。ここ、きて」
ひょいと小脇を抱えられると、彼の膝の上に乗せられる。そうかと思えば、耳、首、頬、瞼とあちこちにキスをちりばめられ、思わず体をよじった。
「くすぐったいってば」
「やっぱり今日の佐和さん甘い香りがする。何の匂いだろ」
その匂いの元を探すようにキスをしながら嗅いでいる。ますますくすぐったくて、思わず声が漏れる。
「ちょ、や、んっ」
「ここじゃない。ここかな」
言いながら手の甲にキスを落とす。きっとさっきまでチョコを作っていたから、匂いが染みついているんだろう。ばれないか内心ドキドキしていると、
「ひゃっ」
勢いよくソファに押し倒された。気が付くと、目の前には意地悪な笑みを浮かべる樋山くんがいて、しかも部屋着の隙間から鎖骨のラインがチラチラ見えて、思わず喉が鳴る。
「もっと詳しく検査してみる必要がありそうですね」
まるで三流映画のようなセリフだが、彼が言うと陳腐なセリフも一流に思えてしまうから不思議だ。
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