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パーカーの裾から骨ばった手がするりと入ってきて、その冷たさにピクリを背中が浮く。
これはもう……そういうことだ。
そういえばこんな風に抱き合うのは久しぶりかも。最近お互い忙しくてゆっくりする暇がなかったから。
「佐和さん」
私の下着を器用に外しながら、キスを繰り返す。彼のくれるキスが好き。ずっとこうしていたいくらい、甘くて優しくて、溶け落ちてしまいそうになる。
「ねぇ、渉」
「ん?」
「電気消して」
「やだ」
でた。お得意の「やだ」発言。そうやって甘えた声で言えば私が許してくれるとでも思っているんだろう。
「お願い」
「やだって。全部見たいもん」
見たいもん、じゃないし。でも迂闊にも、可愛いと思ってしまう自分がいる。
「それにもう無理。スイッチ入っちゃったし」
「んんっ!」
強行突破と言わんばかりに、私の弱い部分をいきなり突いてくる。息が上がり、涙目になった私を満足するまで観察した後、樋山くんは部屋着を一枚一枚はぎ取っていった。結局照明は煌々と明るいまま。いつもこうだ。彼の言いなり。思う壺。
「佐和さん、可愛い」
……もう、人の気も知らないで。
平日の夜だと言うのにくたくたになるまで抱かれ、この後何もする気が起きなかった。隣では満足げに眠る樋山くんの姿。
「無防備な顔しちゃって」
結局何でも許しちゃうんだ。この先、突拍子もないお願いをされたとしても応じてしまいそうだから怖い。
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