番外編~my very sweet Valentine~

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バレンタイン当日は、社内があまったるい 雰囲気に包まれていたと思う。もちろん、うちの部署も。 結局何を買ったのか知らない(お金だけはしっかり請求された)が、女子社員がせっせと男性陣に義理チョコを配っていた。今日は一日不在だというのに、樋山の机にもいくつか置いてあった。きっとうち以外の部署からもきているのだろう。 私も……一応作って持ってきた。昨日仕事が終わって徹夜で作ったガトーショコラ(もどき)。何度も失敗して、人に渡せる程度のものができたのは朝の4時だった。 でもきっとあの山積みになったチョコの中には私よりうんと上手で、おいしい手作りチョコが紛れているんだろう。そう思うとちょっと気分が沈んだ。 仕事を定時であがり、待ち合わせ場所であるホテルへ着くと、すでに樋山くんが待っていた。 相変わらずこういう時はきちんと正装していて、年齢より大人っぽく見える。前を通る女性が何人も振り返って見ているのが目にとまる。 「樋山くん」 「佐和さん。お疲れ様です」 「待った?」 「いえ全然。行きましょうか」 言いながら腕を差し出す。その腕に手を絡ませると「うん」と頷いた。 前に私が行ってみたいと言っていたこのお店。メディアでも紹介されていて、予約の取れないお店として有名なのによくとれたなと、感心しながら辺りを見回す。 そんな私の前で樋山くんはコースとワインをさっと決めてくれ、その後リラックスした様子で窓の外を眺めていた。その姿はすごく絵になって見惚れてしまうほど。 こういうところに来ると彼が御曹司なんだっていうのがよくわかる。品があって、作法だって洗練されている。普段は独占欲が強い子供みたいだけど。
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