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「この後どうします?」
レストランを出ると、樋山くんが言った。
「あー……そうだね、どうしよっか」
「このままここに泊まって行きます? 明日休みだし」
「え? でも、予約なんてしてるの?」
「ちょっと聞いてきます」
ちょっと聞いてくるって……。こんなリッチなホテル、いきなり泊まれるはずないじゃない。
って、思っていると、キーを片手に戻ってきた。嘘……。
「どんな手使ったの?」
「俺を誰だと?」
にやりと笑ったかと思うと私の手を引き、エレベーターホールヘと向かった。
これが御曹司パワーというやつ? ずっとひた隠しにしてきたくせに、こういうときには使っちゃうんだな。思わずクスクスと笑ってしまった。
「素敵な部屋。眺めもすごーい」
完全におのぼりさんになりガラス窓に張り付いていると、そんな私を見て樋山くんがクスクスと笑っていた。
「めずらしく佐和さんのテンションが高い」
「ごめん、なんか浮かれちゃって……恥ずかしい」
「照れなくていいですよ。最高に可愛い」
「やめてよ」
「さっきのネックレス、つけてみてもいいですか?」
「うん」
可愛くラッピングされた箱からそれを取り出すと、私の髪を器用にかき上げ、樋山くんがつけてくれた。
「思った通り。良く似合ってる」
「綺麗……ありがとう、樋山くん」
「どういたしまして。指輪とダブルでつけてくださいね。俺のだって証」
「またそう言うことを」
不意に飛び出すお子様発言に思わず笑ってしまう。あんな演出ができて、こんなリッチなホテルも易々と取れちゃう男なのに。でもそのギャップが可愛く思えてしまう。
二人でクスクスと笑い合っていると、ふと目が合って、お互い吸い込まれるようにどちらからともなくキスをした。
このシチュエーションもあって、キスだけなのにドキドキしてしまう。
だけど、心のどこかで引っかかっていた。なんとなく集中できない。
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