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「東雲さん、今度ランチ奢らせて?いつも無理言っているお詫び」
「え?いいんですか?嬉しい!」
声を張り上げ、目を見開き喜んだフリをする。これも営業の一つだ。
「何が好き?こっちはいつでもいいから連絡して?」
「ありがとうございます!」
お決まりの笑みを貼り付け、お礼を言った。
本当はサンドイッチも残してきたし、ここまで社用車をぶっ飛ばし、宅急便のお兄さんもびっくりの脚力で全力疾走してきたんだから、ランチなんてケチくさいこと言わないで、前々から口説いている内視鏡ロボットの購入を前向きに検討してもらいたい。
と、喉元まで出かかったけど、心の中だけで止めておいた。
「本当はディナーがいいけど。彼氏に怒られちゃうよね?」
「……そうですね。彼、嫉妬深いので」
「そっかそっか、だよね。じゃあ、連絡待ってる。本当これ、ありがと」
そう言い残し、浜岡さんは院内へと急いで入って行く。そんな小さくなっていく背中を私は憮然と見送った。
「うざ、そんな相手もういないっつーの」
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