進まない時間

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「お疲れ様でした。 お先に失礼します。」 いつも通りに仕事を終え、 いつもより丁寧に身支度を整える。 「これからデート?」 更衣室でからかうように問われたことに 曖昧に笑って誤魔化しながら 私は会社を出る。 「さむっ。」 一歩外に出ただけで 息は白く、風は痛いほど冷たい。 吐いた息につられるように見上げた空は 厚い雲に覆われている。 あまりの寒さに足を止めていた私は マフラーに顔を埋めるようにして 駅までの道を足早に歩いた。
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