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それは信太がまだ、小学校四年生の頃、正月の日に起こった出来事です。
前日に「怒ってはいけない小説家24時」を観終わっても、チャンネルはそのままに、新人漫才師の登竜門となる、大晦日番組を付けっぱなしにして寝入ってしまった、その翌日。
信太は、自室で寝転がり、行儀悪く餅を食べていました。
「うっへ、正月超最高ー。今年は良いことありそう。うへへへへ」
何の根拠もなく、良い年になりそうだ、などと、まるで一月一日から禁煙を予定するお父さんのような思考で、冬休みを満喫していました。
「いや~、ろくでもないね。テメェはよー」
どこからともなく声がします。
その声が、続けてこう神託を授けました。
「テメェは三秒後に瞬きをする。四秒後に呼吸をする。二十四時間以内に飯を食うだろう」
「誰だ! そんな可笑しなことを言うのは! あっ!」
信太は、目をしばたたせながら、ハッと息を呑みそう叫んだ。
「出てこーい!」
焦るのもそのはず、既に二つも予言を的中させられていたのです。
しかし、部屋を見渡しても誰もいません。
「誰もいねーし。キモッ! キモ、キモッ」
その時でした。信太の勉強机の引き出しが、ガタガタと音を立てはじめました。
「あっ、おれおれー。おれー。まっテメーもそんな怒んなよー」
「ワッ!」
驚いたのは信太でした。
なんと青い服を着た小太りの男が、机の引き出しから出てきたのですから、さぁ大変。
「てててててて、テメー! 誰だ、どこだ、何しに来やがったテメェ!」
徐に机に近づくと、信太は引き出しを改めました。
「なんでやねん! おかしーちゃううんー?」
「そんな関西弁で言われても……困るなァ」
そう言ったあと小太りは、昨晩のバラエティ番組に感化された信太の関西弁を真似て、こんなことを言ったのです。
「まぁーそんな事は、今はエエんとちゃうん? オレはおんどれの、おっとろしい運命知っとるやん? せやから助けたろうーおもてなぁ~」
目をパチクリさせながらも、信太は先ほどの良く当たる占いについて聞き返しました。
「三秒後に瞬き? 四秒後に呼吸?」
小太りは事も無げに返します。
「ほんまやん。そんな大したことでもないんよ? だって自分、もうこの先ずっと不幸やん?」
「エー!」
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