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叶うはずはないと知っていた。
私はあなたに「エリィ」と呼んでいただくだけで十分に満たされた。
物心がつく頃にはあなたはもう私の側にいた。
父がいて母がいて、あなたがいる。
兄のようなあなたと友達のようなシディアス。
それが壊れてしまったのは、シディアスが消えた日だったーー。
その前からシディアスはやけに仕事熱心になっていた。
それがノーヴィリアンとの’恋’に夢中だったとは後から知った。
私はシディアスが心配だったわけではなく、あなたが悲しい顔をすることが嫌でどうにか王宮で下働きとしてもくり込んだ矢先にシディアスは何も言えない姿でルークルと帰ってきた。
「また、行ってしまうのですか?」
「ああ、始めてしまったからにはどっちかが滅びるまでは終わらないんだろう。それだけの覚悟を持てなかったのは俺の責任だ。こんなつもりじゃなかったんだがな」
私の心は不安で縛られていた。
あなたを失う恐怖に支配されていたの。
手の震えを隠すように両手を体の前で握る。
祈りにも似た姿に誰に祈ったらいいのかわからないけど、「あなたが無事でいてくれますように」と祈った。
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