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「……お待たせいたしました。続き、聞いて下さる?」
魅惑的に微笑む。この男に、断るという選択肢があろうか?いやない。
「お帰り、マリカさん。貴女のお願いを俺が聞かないわけないじゃないですか。」
爽やかに答える。
「うふふ……、優しい方。ねぇ?私を癒して下さいな。あなたのすべてで。」
断れない、断ってはいけない。男として、囮として。刺し違えても、託す。
……だが、死んでやるつもりはない。
「……損な役回りだぜ。自ら飛び込んどいて言うのもなんだけどな。」
ボソリと呟く。
「どうかされまして?」
首を傾げて、わかっている応えを待つ。
「……言わせないでくださいよ。わかってるくせに。」
何も知らなければ、流されてしまいそうな甘い微笑みを返す。
「……嬉しい。私の部屋にいらして?」
3月ウサギはマリカを抱き締め、意思表示した。
「こちらですよ……。」
……誘おうするマリカの手を掴む。
「その前に……。ちょっと緊張しているので、コーヒーを頂けませんか?貴女の淹れてくれたコーヒーが飲みたい。」
一瞬目を見開くが、すぐに微笑む。
「……可愛らしい方。待っていらしてね?」
疑いもせず、食堂を出て厨房に向かうマリカ。食堂を出るまで、うっとりとした表情をしていた3月ウサギ。
……後ろを向いた瞬間、顔が強張る。彼女の背後に、うようよとしか表現の出来ないものが蠢いていた……。
自分に霊感なんてあっただろうか。いやないはず。多分、この屋敷にいるからみえてしまっているだけ。想像することしか出来ないが、あれはきっと、失敗したときの彼の末路。今までの被害者、行方不明者ではないだろうか。そうだとして、人数なんてわからない。
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