第10話 招かれざる客、3月ウサギの男気

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「……お待たせいたしました。続き、聞いて下さる?」 魅惑的に微笑む。この男に、断るという選択肢があろうか?いやない。 「お帰り、マリカさん。貴女のお願いを俺が聞かないわけないじゃないですか。」 爽やかに答える。 「うふふ……、優しい方。ねぇ?私を癒して下さいな。あなたのすべてで。」 断れない、断ってはいけない。男として、囮として。刺し違えても、託す。 ……だが、死んでやるつもりはない。 「……損な役回りだぜ。自ら飛び込んどいて言うのもなんだけどな。」 ボソリと呟く。 「どうかされまして?」 首を傾げて、わかっている応えを待つ。 「……言わせないでくださいよ。わかってるくせに。」 何も知らなければ、流されてしまいそうな甘い微笑みを返す。 「……嬉しい。私の部屋にいらして?」 3月ウサギはマリカを抱き締め、意思表示した。 「こちらですよ……。」 ……誘おうするマリカの手を掴む。 「その前に……。ちょっと緊張しているので、コーヒーを頂けませんか?貴女の淹れてくれたコーヒーが飲みたい。」 一瞬目を見開くが、すぐに微笑む。 「……可愛らしい方。待っていらしてね?」 疑いもせず、食堂を出て厨房に向かうマリカ。食堂を出るまで、うっとりとした表情をしていた3月ウサギ。 ……後ろを向いた瞬間、顔が強張る。彼女の背後に、うようよとしか表現の出来ないものが蠢いていた……。 自分に霊感なんてあっただろうか。いやないはず。多分、この屋敷にいるからみえてしまっているだけ。想像することしか出来ないが、あれはきっと、失敗したときの彼の末路。今までの被害者、行方不明者ではないだろうか。そうだとして、人数なんてわからない。
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