第8話 雷鳴と共に誘われて

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……富士の樹海ばりに方向感覚を失いそうな森の中。屋敷があったとされる近辺を捜索していた矢先。突然、雷が鳴り出した。 天気予報は、向こう一週間晴れ。正確には、出発してから半月は晴れのはずだし、さっきまでは降る予兆すらなかった。 「……招かれたみたいね。受けてやろうじゃない、この招待を。」 不適に笑う。 「誰かが条件に合致したのか?」 そこまでバカではなかったらしい。 「た、多分そう……。」 今はまだ、誰が条件を満たしたかなんてわからない。あちらさんより人数が一人多いだけに、予測は出来ない。取り敢えず、雨宿りを探さないとならない。 ………だが、雨宿りしようと走った先に、"洋館"が見えた。きっとあれが、目指す屋敷だと皆直感的に覚 さと った。 皆、無言で軒下に走る。 「わー、びしょびしょのぐちゃぐちゃだよ!」 ボキャブラリーが少ないアリスは、そう切り出す。確かに、一番水を吸いやすい衣装だ。衣服を絞りながら、見上げ、見渡す。視界に見える範囲に建物はここしかない。森の中にいたときとは、空気も心なしか違う。 「……建物が新しいな。型はかなり昔のものなのに。」 生物以外の話題なら、意外とまともな帽子屋。 「さて、3月ウサギお待ちかねの美女ゴーストとご対面ね。」 興味なさげにいい放っていると、その声に呼応したように扉が開き始めた。 『あら、旅のお方かしら?さぞかし、急な雨でお困りでしょう。中にお入りになって? 』 ややあって、綺麗な大人の女性の声がした。獲物を狙うは、ゴーストになった美女。
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