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その女の人は、人波を離れ、寂しそうな道を歩いて行きました。そして地下への階段を下り、人気のない地下鉄の駅にたたずんでしまいました。
「夏子、止めないと!この人飛ぶ気だよ。」
「飛ぶって何?」
「いいから、付いて来て!」
その女の人と線路の間には、小さな光が二つ飛んでいます。
「何これ、蛍?馬鹿じゃない私。こんな真冬に蛍なんて、、、」と言って、また1歩と線路に近付くその女の人の心に、二人の言葉が届きます。
「もう、帰って、寝てしまった方が良いよ。少し疲れてるだけだから。ゆっくり寝れば良くなるよ。帰ろう。今晩は、いっ緒にいてあげたいよ!」と兄が、
「お姉ちゃん、いっ緒にいてあげるから、帰ろう。」と妹がまた言いました。
その女の人は辺りをキョロキョロと見回しますが、辺りには誰もいません。唯、彼女の前には、二つの光りが飛んでいるだけです。
「1歩下がってみて、ほら、もう1歩、、、そうだよ、そんなに、近付いたら危ないよ。」と兄が言い、妹は、その女の人の胸の中に飛び込みました。
すると、その女の人は少し温かく成るのを感じました。
それでも、
「あなた達が話しているの?そんな事、ある訳ないか、、、薬のせいかな?幻覚まで見るようじゃ、もうだめね、、、」と、ボソっと小さな声で呟く女の人の前で、兄は何度か点いたり、消えたりしました。妹の夏子は、その女の人の胸の中で、大きく光りました。
「あなた達は天使なの?私を助けようとしているの?」と言う声に、
二人は声をそろえて、
「わかんない、でも、帰ろうよ。」と答えます。
その晩、その女の人は、この兄妹に見守られながらベッドに入りました。何時もは冷たいベッドも、その夜は少し温かく、穏かな気持ちで、眠りに付く事ができました。
翌朝、その女の人が目を覚ますと、曇った窓ガラスには、
「私達の幸せは、お姉さんの幸せで、それが、私達を幸せにしてくれるんです。だから、お姉さんも、もう少しだけ頑張って、幸せに成ってください。どうしても、辛い時には、繁華街の大きなクリスマスツリーにまで、会いに来てください。」と書かれてありました。
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