クリスマス前と、、、

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 その質問に、兄は少し考えてから、 「僕も、こんな風に成ってから、何が幸せなのかって、時々考えていました。沢山の人が、色んな理由で苦しんだり、悲しんだり、傷付いたり、傷付けたりして。それでも、人って、やっぱり1人では生きられないのかなって、、、」  お爺さんは、まだニコニコと笑っています。  「やっぱり、お爺さんが言う様に、自分の為にも、他の人の為にも、何が幸せかって、考えながら生きる事なんでしょうね。人って幸せに成る為に生きているんですよね。」  「それが、君が望む事かね?」  「何となくそう思います。」  「君達の望みはかなうかもしれないよ。さあ、目を閉じなさい。」とお爺さんは、その大きな温かい手を、兄と妹の頭の上におきました。    そのとたん、二人は眠たくなり、体が中に浮きました。  朝、兄は、リビングのクリスマスツリーの下で目を覚ましました。周りには、幾つかのプレゼントが置かれています。    「夏ちゃん、起きて!家だよ。羽が無いよ。元に戻ってるよ。」と言う兄の声に目が覚めた妹は、辺りをキョロキョロと見回します。  すると、リビングの扉が開きました。そこには、大きな涙を目に溜めた2人の母親が立っています。  妹は、すぐさま立ち上がって、 「ママが、、、ママが見える。ママ、、、」と叫ぶなり、両手を大きく開いた母親の胸に飛び込みました。      年が明けた元旦、兄は学生服で、妹は可愛い振袖姿で、何時もの繁華街を通って、初詣に向っています。クリスマスツリーは無くなり、すっかり、お正月の飾り付けです。 そして、そこには、頭に包帯を巻いた少年が1人たたずんでいます。  妹は、兄の手を引っぱり、その少年に声をかけました。 「あけまして、おめでとう、、、」  「えっ、いや、おめでとう、、、何処かで会いました?」  すると、兄が右手をさしだして、 「去年、公園で話したよね、、、」と言うと、  少年は二ッコリと笑い、、嬉しそうに、 「あけまして、おめでとう御座います、天使さんの兄妹ですね!」と言い、  妹も二ッコリと笑って 「もう、天使じゃないよ。ほら、羽が無いもん。もう、飛べないよ。そうだ、ねぇ、いっ緒に初詣に行かない?今年は良い年に成るよう、お祈りしようよ。」と言いました。   【 おわり 】   
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