415人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「それで?
仕事やめてパパはこれからどうするの?」
妻が顔をこちらに向けずに聞いてくる。
「・・・とりあえずはな。金貯めまくりたい。何億何十億何百億だ。
できると思うかな?」
「できるわ。
この世界、地球において規格外すぎる力を持つ私達なら、手段さえ選ばなければできるでしょうね。
まずは銀行でも襲う?」
妻の顔は動かない。
「時速二百キロで走れる人間はいない。
そして法が裁けるのは人間だけ。
アリバイさえしっかりしていれば俺達は捕まらない。狙うなら深夜。
覆面被っておっさんタイムで突っ走って、壁どかーん金庫どかーん。
誰一人傷つけず大金手に入れられるかもな。」
「そのお金を元手に株を買う。
そしてライバル企業を氷漬けにでもする?
それを続ければもっと大きなお金が動かせるかもね。
だけどね、パパ。私が聞いてるのはそんなことではない。」
「・・・そう、だな。
どうやって、じゃなくて、どうして、か。
俺もわかんねえんだよ。
この平和な、安全な地球がさ。
なんていうのかな。何かが変わっていっちまう。そんな気がするんだ。
そのために今、備えておきてえんだよ。
大金持って世界中廻って、あっちゃこっちゃに備えておきてえ。勿論この日本にもだ。」
ふぅぅ。妻が目を伏せて溜め息を吐く。
「・・・あなたは、怯えてるのよ。」
「・・・・・・ああ。
だから・・・待ち望んでるのかもな。」
最初のコメントを投稿しよう!