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長年連れ添った夫婦だからこそ言葉が足らずとも伝わる想い。
夫は。○○さんは怯えているのだ。
だけど彼が怯えているのは変わっていく世界にではない。
この・・・変わらない、脆すぎる世界と、それを簡単に壊してしまえる自分に怯えているのだ。
・・・どこまで行っても。
例え異世界へと飛ばされ、神だの魔王だの魔物だのと戦い続けて帰還を果たしたとしても。
この人は、ただのおじさん。
ヒーローに憧れるけれども、ヒーローのようには生きられないただの悲しい人。
ねえ。パパ。
あなたは、私のヒーロー。
それで充分だったじゃない。
それで幸せだったじゃない。
・・・戻ってきてよ。パパ。
あなたの心はまだ・・・戦いの中にあるのね。
前を見つめ、ハンドルを握る夫の横顔を盗み見する。
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