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昼が過ぎ、宵闇が消え、朝焼けの中。
世界に溶け込むように消えていった歌声をいつまでもリフレインさせて佇む英雄達。
空には少し油臭いような太陽が新たに生まれ、時々瞬いている。
「・・・行ってしまったな。彼も。」
ゆうすけが目元を拭いながら呟く。
「・・・本当にね。
ったく最後の最後までバカのまんま行くってどうなってんのよ、あの人の頭の中。」
小鳥が憎らしげにさえずる。
「・・・ふふ。君も本当はわかってるんだろ?
いいよ、僕の前だからって無理しなくても。大丈夫だから。」
夫が妻の腰を抱いて引き寄せた。少し迷うように頷き、そっとその胸に頬をうずめて静かに泣く小鳥。
「・・・いっちゃったっすね。どM野郎。
って、弦子さんも泣いてるんすかっ!?」
妻の様子に驚くミカオ。キャラ的に泣くイメージじゃなかったらしい。
「・・・・・・ぐすん。
いやさ、私も年食って涙脆くなったんかね?
まぁさ。前の時は俺が先に逝っちまったからよ。今回は看取るってのも変な話だがそれができた。妙に嬉しくってな。」
「・・・お前、誰だ。」
ミカオが不機嫌そうに妻に突っ込む。
「ふおっ!?あっ!ちっくしょう!一瞬目覚めやがった!
ったくウスラハゲは寝てろっての!南無南無南無南無・・・。」
パァン!
手を合わせてひとしきり祈り、頬を叩く弦子。
「うおっし!成仏完了っ!!
よっし!ミーきゅん子作りすんぞっ!」
がっ!
「えっ!?ちょっ!?マジっすかっ!?
げ、げ、弦子さんっ!?まだ余韻的なムードっすよっ!?
あ~~~れ~~~~。」
妻に腕を取られ、引きずられて去っていくミカオ。
その場に集っていた英雄達が生ぬるい目で見送る。
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