始まりと終わり

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ニコニコと子供達と談笑していると、再度扉が開いた。パタパタと此方にむかってくる音で、妻が病室に入ってきたのだと分かった。 「あなた、先生今来るって…」 往診の放送が入ってから十五分。そろそろかと構えてはいたが、とうとう包帯が取れる瞬間が訪れた。 妻の足音に続いて、此方に向かってくる数人の足音。 高めの靴音が二人、これは看護士さんのものだ。 …その後ろからナースカートの音に混じって革靴の音が此方に近づいて来るのが分かって、俺の病室のカーテンの前で止まる。 「野谷さーん、野谷さーん。往診の時間ですよ」 シャッとカーテンが引かれる音がして、椅子に誰かが座る気配がした。 「野谷さんの朝のバイタルは?」 看護師が確認のために、紙をめくる音がする。 「心拍数 78、血圧が上115の下が72、体温が36.2℃です」 「問題なさそうだな。…今日は包帯を外しますね」 その言葉にコクリと頷くと、先生の腕がするりと此方に伸びたのが分かった。
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