ある日の放課後

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6限の授業終了の鐘が鳴り、先生が教室を出ると同時にざわめく生徒たち。特に連絡事項がないのか、気をつけて帰るようにと言うだけの担任の挨拶を合図に教室を飛び出す男子たち。その様子をただ淡々と観察しているのは私、柊柚子(ひいらぎゆず)17歳。現役の女子高生だよ☆ さて、帰ったら何しようかな? 小説も書きたいし、アクセサリーも作りたいな。放課後の予定を立てながら私は帰路につく。 「Einigkeit und Recht und Freiheit ヴルストが食べたいな あ、ビールもだ! Einigkeit und Recht und Freiheit マスタードつけて食べたいな」 ドイツに行きたいな~。大人になったら行きたい国なんだよね、ドイツ。ビールの祭典オクトーバーフェスト、ドイツのビール、民族衣裳、クリスマスマーケット、古城巡り、ロマンチック街道……。大学はドイツ語を専攻できるところにしよう! よし、早く帰ってドイツ語を勉強しよう! 「何? これ」 突如、私の足元に魔法陣が現れた。動こうにも動けない。頭の中は完全に混乱し、そうこうしているうちに魔法陣は強い光を放ち、私の意識はプツリと落ちた。 気が付くと、硬い石造りの床に寝ていた。自分を中心に魔法陣が広がっていることから、また光を放つのでは? と警戒するが、そんな様子はないため、少しほっとする。 「あの……」 一人で状況の整理をしていると、女の子に声をかけられた。 「貴女は? ……っ!?」 声を出して驚いた。私の声じゃない。何コレ? どうなってんの!? 何で声が男になってんの!? ハッとして胸ポケットを探る振りをしながら胸の膨らみの有無を確認。ない。さすがに下の確認は後にして、服装の確認。黒のスラックスに黒のジャケット、白のシャツにグレーのネクタイ。服装が高校の制服からスーツに変わってる。 「えっと、初めまして、勇者様。私、ディアモン王国第一王女フラヴィと申します。勇者様のお名前を」 名前? どうしよう……さすがに、柚子は使えない。なら、お兄ちゃんの名前を使う? 待った。万が一にもだけど、お兄ちゃんがこっちに来てしまったら? 流石にそれは不味いな。こうなったら、名前を作るか。名前……名前……怜……御堂怜にするか。 「申し遅れました。私の名前はレイ・ミドウと申します。宜しくお願いいたします」 そう言って一礼したら、フラヴィ王女が顔を赤らめた。えー。惚れられても嬉しくないよ。私、女の子だもん。
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