ある日の放課後

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「殿下、お時間が迫っております」 「わかりました。では、レイ様、謁見の間へ行きましょう」 「はい」 やってきました、謁見の間。入る時は一礼して、玉座の前まで歩み、跪いて頭を垂れる。 「突然の召喚に不安を感じておるだろう。誠に申し訳ない。私はディアモン王国国王アンリ。勇者殿の名前を聞いてもよろしいかな?」 「はっ。私の名はレイ・ミドウと申します」 「ありがとう。早速だが、レイ殿。貴方をこの世界に召喚した訳を話そう。今、古に封じられた魔王の復活の兆候が世界各地で起こっている。そこで、私達は古くから伝わる召喚の儀を行い、貴方を召喚したのだ。どうか、この世界を救ってはくれないか?」 「申し訳ございませんが、私に世界を救う力などありません。私のいた世界では、私はただの学生で、国は治安の良い、平和な国でした。私は戦いの経験がありません。どうか、修行の時間と魔王について調べる時間をください」 「断るわけではないのだな?」 「はい。可能性があるならば、世界を救うお手伝いをさせていただきたく存じます」 「よし、早速だが、覚醒の儀を行う。覚醒の泉へ参ろうか」 覚醒の泉って何? クエスチョンマークで頭の中を一杯にしている私を無視して、国王は玉座から立ち上がり、私の手を引いて歩く。どうしてこうなった? 国王に連れられ、覚醒の泉に着いた。 「さて、レイ殿。ここが覚醒の泉だ。言い伝えによると、勇者はこの覚醒の泉にて身を清め、聖剣を授かり、初めて勇者と成るのだとか」 「レイ様、頑張ってください」 何を頑張れと? まあいいや。取り敢えず、泉に入ろう。 「それでは、身を清めて参ります」 泉は見た感じ、水深はあまり深くはないみたい。膝位の深さかな。中心まで歩みを進めると、不意に視界が暗転する。何が起きたの? 気が付くと、モノクロの世界に立っていた。ここはどこ? 「ようやく、話ができるな」 「誰!?」 後ろから聞こえてきた男性の声に振り向くと、黒スーツに白のシャツ、グレーのネクタイを身に付けた長身で端正な顔立ちの男が立っていた。 「私は御堂怜。もう一人の君だ」
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