ある日の放課後

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さて、戦いに集中しないと……っ!? 斬撃が飛んできた!? 何かが飛んでくる気配に反応して避けられたから良かったが……。油断したつもりは無いけど、あの騎士団長、かなりの手練れだな。殺しにかからないと失礼かも。気を引き締めろ、自分! 自分を心の中で一喝し、騎士団長を見据える。相手は武器持ち。私は丸腰。さて、どう出るか。挑発でもしてみるか? いや、無策で挑発しても無意味だ。なら……正面から正々堂々の殴り込みか? 下手したら殺されるな。やはりここは、超近接のフェイントを交えた殴り合いにしようか。 「さっきのは挨拶代わりだ。来ないなら、こちらから行くぞ!」 むこうから来てくれるなら、カウンターでもお見舞いしてやるか。騎士団長から視線を外さず、腰を落とし、フェイントで繰り出された彼の突きを見切って本命の袈裟斬りを蹴り上げて反らし、軸足を切り替えて回し蹴りを顔面に叩き込む。 「ぶぐっ!」 男の体になっているからか、中々に重い蹴りを食らわすことができたようだ。さて、相手はよろけている。次の手はどうしようか? カウンター戦法だけじゃ味気無いし、騎士団長だって面白くないだろうし、何より、私自身がつまらない。だが、長引かせる理由が全く無いんだ。さっさとノックアウトしよう。剣を握っている右手を右足で蹴り上げ、剣を落とさせる。 「ぐっ!」 カランと落ちる剣。軸足を右に移して左足で彼の右肩を蹴り、まずは片腕を使えなくする。 「ぐあっ!」 着地と同時に右半身を引き、拳を握り、勢いを着けて鳩尾に叩き込む。 「ぐふっ!」 鳩尾を押さえて蹲る騎士団長に、彼が落とした剣を拾って、彼の目前に突き付ける。 「Check mate. 国王陛下、宣言を」 騎士団長に剣を突き付けたまま、国王陛下が座っている方を見る。彼は食い入るようにこちらを見詰めていた。まさかとは思うが、勝負が決まったことに気付いてないなんてことは無いだろう。 「国王陛下?」 「……はっ!? あ、ああ……ええと……れ、レイ殿の勝利」 国王陛下の宣言を聞き届けた後、私は騎士団長に突き付けていた剣を下げ、一礼して彼に返した。彼は剣を受け取ると、鞘に納め、私に右手を差し出す。
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