烈姫ーrekiー

10/17
75人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「こんなところでひとりカップ酒とは思いませんでした」 「あ、は、はい?」 「アパートを訪ねたんですが、まだ帰ってなかった」 「ええっ、おっ、おおっ?」 「電話をすればよかったのですが、あいにくと僕はあなたの携帯電話の番号を知らない」 「あっあっあの……主……」 「職場じゃないのですから、伏見で構いませんよ、鴨川さん」  なにがどうなっているのかさっぱりわからない。伏見はさっきからなにを言っているのだ。全然理解できない。いや、日本語は通じている。が、訳がわからない。 「あ、あの、いったい……」 「せっかく寿司を買ったのに、どうしようかと途方に暮れていたら、チーカマの匂いをぷんぷんさせたこの子が纏わりついてきて……」 「す、寿司? チーカマ?」  伏見の足元には件の猫がちょんと座っている。チーカマを食べて満足したのだろうか、懸命に顔を洗っていた。 「なんだか、導かれているような気がしてついてきたんです」 「く、黒猫について……? いや、普通は不吉とか……」 「なにを言っているんです、黒猫は吉兆ですよ。祖母が言っていました」 「吉兆?」 「祖母の言ったとおりでした」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!