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「相手にしなかった女性からもひどい嫌がらせを受けました」
「…………」
話が見えない。伏見はいったいなにを話そうとしているのだろう。
伏見がカッコいいこともモテることも鴨川はよく知っている。いまさら言われなくてもわかっている。女性だって選び放題だったろう。ふられた女性がひとりやふたり、いやもっといたとしても驚かない。
「でも、仕方ないでしょう? 興味を持てないのですから……」
「はあ、まあそうでしょうね。興味が持てないなら付き合えないでしょう」
伏見はふるふると首を振った。
「鴨川さん、僕は物心ついた頃から女性を性の対象として見られないのです」
「はあ!?」
驚いた。これには驚いた。それはその、伏見はゲイだということなのだろうか。
「軽蔑しても構いません。僕は僕のような人たちが、世間からどんな目で見られているか、よく知っています」
「いや、いやいやいやいや、主……いや、伏見さん!」
「だから僕は頑張ったんです、仕事。どんなマイノリティでも関係ないって。力になってくれる人も相談できる人も、友人も僕にはいない。だからひとりでここまで頑張って来たんです。ただ前だけを見て、どんなことがあっても惑わされず一直線に進んで来た。仕事だけが僕の支えです。なのに……あなたが来た……」
「お、俺?」
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