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この数カ月でわかったことは、このネチネチいびりともとれる行動が、鴨川に対してだけ、ということだ。
新人は鴨川だけではない。春に新卒で入職した者もいる。
伏見主任は彼らに対しても確かに厳しいがネチネチではない。上司らしく指導者らしく毅然とした態度だ。要するに鴨川だけがネチネチの標的にされている、ということなのだ。
この手のことは、あまりにもひどいようなら伏見の上司に相談すればいいのだし、配置換えを頼んでもいいのかも知れない。だが鴨川はそうはしたくない。
どんなにネチネチやられても黙って「はい」と頷き、文句も言わずに仕事を続けているのには理由がある。
それが目下のところの一番の悩みでもあるのだ。
伏見佑はきびきびとして仕事の出来る男。超がつくほどの美形だ。線は細いが意外と身長があり、女性と間違えられるほど端正な顔立ちをしているのに声は低くてハスキーだ。
そして鴨川のもろ好みのタイプなのだ。ドンピシャビンゴの存在なのだ。
入社初日に挨拶をした時には「やったぁ!」と叫んで万歳しそうになったくらいだ。
その後一週間くらいはネチネチいびりもなかったから幸福な気持ちでいられた。
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