烈姫ーrekiー

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「あ、お前っ、しっしっ!」  慌てて追い払おうとしたが猫は素知らぬ顔だ。ついには丸っこい小さな手で器用にチーカマを引き摺り出しパクリと咥えた。 「コラ! 返せ、俺のチーカマ!」  叫んだ時にはベンチから身軽にひょいと飛び降り、すたこらと逃げて行った。  なんだかどこまでもツイていない。 「ああ……辞めちまうかなぁ……」  どんどん気弱になっていく。  やっとつかんだ正社員。こんなことで辞めていいのか? いや、こんなことと軽く流せる問題ではない。惚れた相手にとことん嫌われて、それでも心はどうしようもなく惹かれていて、どっぷりべた惚れ状態なのに。  辞めてしまったら顔も見られない、声も聞けない。でも辞めなければ毎日が針のむしろだ。いくら考えてもどちらも選べない。 「俺って結構、Mかなぁ……」 「M、ってなんですか?」 「え?」
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