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「じゃっ、俺忙しいから!じゃーねー!」
(さっきヒマって言ってただろーが。)
矛盾だらけの言葉を残し、アルは去って行った。
『…アーゼン、今のは?』
「あぁ姫様。俺の倅のアルヴィンっスよ、可愛いでしょ、惚れた?」
一族代々の受け継ぎである赤髪赤目、アーゼンは片目ウインクで笑う。
『親子2人とも馬鹿が似ている事は分かりました。』
「姫様キビシー。」
ケラケラ笑うアーゼンに無表情を貼り付けるのは、1人の綺麗な少女。
名を、【アリルア・アルカディア】。この国の国王の娘、即ち王女だ。
彼女の黒髪は、異常なまでの艶を放ち肩口まで伸びて踊る。黒い瞳は、寂しそうに屋根の上を器用に走り行く少年を虚ろに追う。
「彼は、いつもあぁなのですか?自由に街を飛び回って、騒がしくて…」
「んー、まぁ四六時中、375日あぁだね、我が子ながら少し未来が心配だ。」
「…1年は365日です。」
ふーん、とアリルアは遠くなるアルの背中をただ呆然と眺めていた。
「…羨ましい、」
「え?」
アリルアのその瞳は、寂し気に揺れていた。
『こらアルーー!アンタまた来たのかい!?』
『おばちゃん何かちょーだいっ!腹減ったー!』
『しょうがない子だねー!』
街のみんなと仲良しのアルに、少しだけ羨望を抱いたから。
「…私は、‘‘鳥”《自由》になりたい。」
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