第1章

15/18
前へ
/18ページ
次へ
あ~あ、塚本さんの行くところは俺の行くところ。今日は舞台稽古に来ている。 は?何だよ。オーディションのセリフは台本から取ったのかよ。あ~聞きたくねぇ。 疲れた…もうイヤだ、だって。そのセリフ俺が言いてぇよ! 塚本さんの役はヒロインの恋人の親友。最初は何かとこのバカップルに振り回されるお人好しなんだけど、振り回され過ぎて、だんだんブラックになっていくという役で、ブラックになる切っ掛けのセリフが、疲れた…もうイヤだで、今までの我慢がぶちギレるみたいな感じかな。 二面性を演じるってことか…そう言えば、オーディションの時も二面性を演じたんだ、なるほどね。塚本さんは演技が上手いみたいだ。 そんな事を思いながら塚本さんに憑いていると視線を感じた。 …ん?なんだ? えっ…もしかして俺と目が合ってる?おいおい…マジかよ! そいつは、塚本さんと同じオーディションで合格した人の後ろに憑いていた。 「おい!」 「チッ!何だよ。」 こいつ…舌打ちしやがった。だけど、この状況、チャンスとみた!怒るなよ、俺。 「お、お前…俺が見えるのか?」 「あ゛?見えるよ。だから何だよ。」 うわっ…質悪そう…。怯むな俺。たぶん奴は、その人に憑いている。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加