彼への気持ち

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「……しぬかと、おもった」 「そう言ってもらえると、男としてはとても嬉しいです」 にっこりと満足げな表情を浮かべる千歳が妙に憎たらしかったので、私は意地になり、その唇に自分の唇を無理やり重ねた。 一瞬だけの軽いキスに、千歳は案の定驚いたようで。狙い通り、と笑ってみせると、千歳は頬を赤く染め上げた。自分でもそうなっていることをわかったらしく、決まり悪そうな表情でそれを手の甲で隠し、目を逸らした。 「ばか、深春のばか、息止まるかと思った」 「そう言ってもらえて、とても嬉しいです」 意地悪くそう返せば、千歳は珍しく舌打ちをして、強引にキスをした。 数回深く重ねたその唇が離れたとき、「こんなにしてたらキリがないよ」と乱れた息を整えながら伝えると、彼は「そうだね」なんて優しく微笑み。 生理的な涙を浮かべる私の目元にキスを落とし、囁くように言う。 「深春さあ、キスしているときに耳のうしろ触られると弱いよね」 「言わなくていいよそんなこと!」 改めてそんなこと言わないでよ……。自分でもわかっているってば。 羞恥に赤くなった顔を両腕で覆うと、千歳がごめんね、と申し訳なさそうに声を出したのでちらりとそちらへ視線を向けると。 「深春、ほんと、可愛い」 心底愛おしそうに私を見つめるその瞳と目があう。 照れてなにも言えない私の頬を親指で撫でた。やめて、そういうふうに触れられると、溶けてしまいそうになるから。 「今までちゃんと言ったことなかったけど、」 焦る私を気にせず、彼はそのまま、私の髪の毛をその白くて長い指でゆっくり梳き、一瞬目を伏せたあと、私を真っ直ぐ見据える。 「深春のこと、好きだよ」 とびきり甘い声で紡がれたその言葉に、私は胸がいっぱいになった。 「……私も、千歳のこと好きだよ」 もう彼氏彼女なのに、不思議な感じだね、と緊張を紛らわすように出したその声も震えていて。 そんながちがちの私に千歳が破顔して声をあげて笑い、抱きしめてくれた。 ふんわりと、千歳のシトラスの匂いに包まれてドキドキしながらも、ぎこちなくその華奢な背中に腕を回せば。 彼が密かに笑った気配がした。
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