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ーーずっと、ずっと、好きだったのに。
水曜日の昼下がり。がやがやと賑わう教室で、私は昼食を食べていた。
私の前の席を借りて目の前で食べている親友は、私が購買部で買ってきたパンを見るなり、眉をひそめた。
「深春、またそのパン?」
「……うん」
「どこまで水瀬のこと好きなのよ、全く」
私が水瀬を好きなことを知っているのは、あかりだけだ。
あかりが、呆れながらウインナーを口に入れながら眺める、私の食べているパンは、水瀬の好きなカレーパン。
水瀬は、私もカレーパンが好きだと思っている。……けど、違う。私はカレーパンよりあんぱんのほうが好きだし、カレーパンはちょっと飽きてきた。
なんでも話せる親友。けど、水瀬が不倫していることなんて、言えない。
相手が知らない人だったら、言っていたと思う。なのに、相手はうちのクラスの英語担当の先生。
ーー七海先生が既婚者だというのは、周知の事実。
当然、水瀬も、知ってる。でも、不倫してる。水瀬が七海先生と不倫し始めたのは、多分一年の冬からだ。
終業式の前日。七海先生と会っているところをあの数学室で、偶然見たときに、私は知った。当然、それより前からの関係だということもあり得るが、取り敢えずそういうことにしている。
初めて見たとき、親しげな空気で、付き合っているんだと一瞬でわかった。
キスをしているところも見たことがある。でも、回数は少ない。それ以上の行為は、しない。しようとしていたところすら、ない。他の場所で、していたりするのだろうか、と考えると、自分で思い浮かべたくせに、気持ち悪くなってくる。
七海先生と仲良いよね、と思い切って話を振った際には、「相談しているんだよ、いろいろ」と返された。
……こっちはキスしているところを見たというのに。
何故好きになったのか、何故不倫をしているのか、どちらから好きになったのか、わからない。
七海先生も水瀬を好きだと知ったのは、あの数学室で隠れて見るようになってからだ。
話している時の目が、恋をしている目だった。
……なんで好きになったの、なんで早く振らなかったの。
早く、別れてよ。傷つくのは、水瀬なのに。
水瀬と別れて、旦那さんとも別れればいいのに。
みんなに、バレる前に。
水瀬が、傷つく前に。
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