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信じるも何も、背が高い女性が好きだなんて言った事も無いし、思っても居ない。そして何より、女の子は背が低い方が可愛いと本当に思っている。
けど、もしも俺が背が高い方が好きだって言ったら美玖はどうするつもりなのだろうか。中学一年で止まった美玖の背が、今から伸びるとは思えないし。
ただ美玖には悪いが、おっぱいは大きい方が好きだけど。
そう言えば高校生になったばかりの頃、事あるごとに牛乳を飲ませてみたり、豊胸効果があると言われる鶏肉や大豆を、晩御飯で使うように母さんに頼んだりと、密かに美玖の胸を大きくしようと試みたけど、全て徒労に終わってしまったな。
そんな話をしているうちに、美玖の家の前へと着く。俺の家と同じくらいの大きさで、同様にごくごく平凡な一戸建てだ。その玄関の前で、美玖がもじもじしながら俺を上目遣いで見つめてくる。
「たっくん。じゃあ、今度は美玖の部屋に……来る?」
「いいの!? 絶対行く!」
「じゃあ、今日は遅いから明日……って、たっくんのお母さんに、また明日行くって言っちゃったね」
「そんなの大丈夫だよ。気にしない、気にしない」
「そういう訳にはいかないわよぉ。じゃあ、明後日は美玖の部屋で……ね」
美玖が小さな声になりながらも、部屋に来て良いと言い残し、逃げるように家の中へ入って行った。
五年も付き合っているのに彼女の部屋へ入った事が無い男――俺が勝手に自分自身に貼り付けていたレッテルが、ようやく剥がせそうだと上機嫌で帰路へ。
「おかえりー。外は寒かったと思うんだけど、今は葵がお風呂に入ってるから、もう少し待ってくれる?」
「ん? あぁ、構わないぜ。じゃあ、暫くしてから入るよ」
実質今まで俺と母さんの二人暮らしだったけど、一人増えれば何らかの変化が生活に現れるよな。
そういえば俺の部屋の隣にある、葵の部屋が空き部屋じゃなくなるのか。
……気分を変えようって事で、あの部屋で美玖と時々イチャイチャした事は黙っておこう。絶対に。
暫くスマホで美玖とメッセージをやり取りしたり、漫画を読んだりしているうちに一時間が経っていた。
流石に葵も風呂を出ているだろうと、パジャマを手にして脱衣所へ。
「ったく。葵、電気点けっ放しだっての」
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