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学生時代、器械体操の選手だった母さんは、女性とは思えないほどの腕力を誇る。
俺の部屋のノブに始まり、トイレ、浴室と鍵のかかるドアノブを壊しまくっていた。もちろん、さっきだって美玖が来てから部屋の鍵を掛けていたけれど、何の抵抗も無く壊されている。
流石に行為の最中に入って来た事は無いけど……無いよね? 俺たちが夢中で気付かなかっただけとかじゃないよね!?
「とにかく、さっきみたいに突然乱入されるのは、ごめんなんだ。もっと、美玖との時間をゆっくり落ち着いて過ごしたいんだよ」
「うーん。でも、美玖の家は里奈が居るもん」
「会った事ないけど、中学生の妹さんだっけ?」
「うん。しかも、同じ部屋だもん。美玖の部屋で甘ーいスイートタイムなんて過ごせないよぉ」
「それな。俺が言いたい事の、もう一つ。俺、中学生になって以来、美玖の家に入った事が無いんだけど」
俺と美玖は所謂、幼馴染みと呼ばれる奴で、家が割と近くだから同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校に通ってきた。
そして中学一年生の夏休みに恋人という関係へ進展したので、高校受験は互いに勉強を教え合いながら一番近くの学校を受験したんだ。その近さの甲斐あって、二人で過ごす時間も長く、結婚しても良いとさえ思っている。
だけど、小学生の頃は遊びに行ったりもしていたのに、今では家まで送っても、絶対に玄関から先へ入れてくれない。だから、妹さんと同じ部屋だとかって話も知らないし、写真でしか見せてもらっていないう妹さんの顔すら覚えて無いくらいだ。
ん……妹? あれ、俺何か忘れてないか?
「妹……妹……」
「たっくん、どうしたの? 突然、妹属性に目覚めたの? おにいちゃん……って、呼んだ方が良い?」
「今まで通りでいいよっ! 何だよ、おにいちゃんって。……でも、悪くない!?」
「えへへ、おにいちゃんっ……って、今日本物の妹が帰ってくるんでしょ? おにいちゃんは葵ちゃんに譲らないと」
「……それだーっ! そっか。今日で三年も経つんだ。月日が流れるのは早いな」
「えぇー、忘れてたの? さっきお母さんと葵ちゃんの事を話してたのにー」
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