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第2話 俺の妹は女子高生
扉を開けた瞬間、大きな瞳の女の子と目が合う。
少し茶色がかった首元までのボブカットで、健康そうな小麦色の肌。何かに驚いているようで、小さな口が丸く開けられたまま硬直している。
だがそれも一瞬の事で、僅かな沈黙の後に、
「お兄ちゃーんっ! ただいまーっ!」
俺の三年前の記憶から、一回り成長した姿の妹――葵が抱きついてきた。
今の美玖と変わらず、起伏の無い真っ平らな身体付きだったのに、出るトコは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。正に女子高生といった感じの体型に育っていた。
決して大きくは無いが、それでも美玖と違って柔らかくてムニュムニュとした弾力のある温かいものが、俺の胸に押し当てられる。
そう、これだよ。俺が欲していたものは、この感触なんだ。まぁ、とは言っても妹に欲情するような変態ではないが。
「おー、久しぶり。海外生活はどうだった?」
「お兄ちゃんが居ないから寂しかった。もう絶対に離れないもん」
「お、おぅ。まぁ久々に日本へ戻って来たんだ。ゆっくりしろよ」
「うんっ! じゃあ、お兄ちゃん。おかえりのチューしてー」
抱きついていた葵が僅かに離れ、小さな顔を俺の正面へと持ってくる。
そして何のためらいも無く瞳を閉じたのだが、スペインはハグやキスが普通の挨拶なんだろうか? 三年間も海外に居たら、文化や風習も向こうに染まる?
ハグくらいなら構わないが、流石にキスはどうなんだろう……と、脳裏に昨日美玖と一緒に見た海外ドラマのワンシーンが浮かび上がる。
「はいはい、おかえり」
思い出した海外ドラマの真似をして、葵の頬に俺の頬をくっつけてみた。これで良いのかな?
「むー、お兄ちゃん。三十点」
「えっ!? 何がダメなのさ?」
「どうして、ビズなのー? 私の口にチュー……何だったら、舌とか絡めても良いのに」
「ビズ? ってか、舌……って何言ってんだよ。母さんが待ってるから、ふざけてないでリビングへ行こうぜ」
そう言いながら、葵のスーツケースを運ぶ。まったく、顔は幼いままだというのに、高校生になったからか、それとも海外で過ごしたからなのか、変な知識がついているようだ。
俺の中には、「赤ちゃんはコウノトリさんが運んでくるんだもん」などと真顔で言っている葵の記憶があるのだが……お兄ちゃんは悲しいぞっ。
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