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「なるほど」
私は口を開いた。
「で…その夢に出て来る二匹の猫に心当たりは有るのかい?あと、その猫達が座っていたって言う、板の間に見覚えは?」
「いや…。それが、猫達にも板の間にも見覚えが無いんだよな…。うーん。どっかで見たような気がしなくもないんだけど…思い出せない」
吉岡は、微妙な表情で私の質問に答えた。
私は質問を変えた。
「例えば、時々、夢の中の映像全体がモザイクがかってるみたいにぼんやりとして見える事なんかが私には有るけど、
吉岡が見た夢は、それとは違うのかい?」
「うん…。
夢にしちゃ、割りと映像自体は、はっきりとしていたと思う…。あくまで、二匹のうち片方の猫の顔だけにピンポイントでモザイクが、かかっているんだよ」
「ふーん。
ちなみに、顔にモザイクがかかっていたのは白猫、黒猫どっちの猫なんだい?」
「あれ?」
と、そこで吉岡はちょっとだけ目を見開いた。
「えーっと…。
顔にモザイクかかってたのって、どっちの猫だっけな…」
「おいおい。そこは覚えてないのかよ。三日間も同じ夢見といて」
私は、少し笑いながら言った。
「だよな…。確かに、変だよな…」
と、吉岡は
少しの間、考え込んだが…
「まあ、所詮は夢の話だし…どーでも良い話だよな。忘れてくれ。変な話をして悪かったな」
と、急にニッコリ微笑みだした。
「いやな。
実は、初めてこの夢を見た次の日の朝、何故かは分からないけど、どうしても誰かに伝えなきゃと衝動的に思ったんだ。
でも意味不明な話だし、話してもどうせ解決はしないだろ…と、見た当日は何とか押し留まったんだよな。
でも三日も同じ夢を見たもんだから、つい気になってしまってな。
でも、こんな話されても、沢村にしたら困っちゃうよな。スマンスマン。忘れてくれ」
吉岡は、頭をかきながら苦笑いするとチューハイをぐいっ!と、一気に飲み干した。
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