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「な?時代がかった板の間…それと、白猫と黒猫…まさに、墨田商店で見た、あの光景じゃないか!」
私は、吉岡にまくし立てた。
「う、うん!!
た、確かにそうだな!」
吉岡も少し興奮しているようだ。
「でも…
何でまた、そんな昔の記憶が急に夢の中に出て来たりしたんだろ…。しかし、三日も続けて」
と、不意に彼は腕を組んで首を傾げた。
「そんな事は、私も分からんよ。まあ、忘れていた昔の記憶が不意に夢に出て来るって事は結構有ると思うけど…
でも、確かに三日続けてってのは、気になるよな…。それに片方の猫にモザイクがかかっているのも、何か妙だよな」
私も吉岡と一緒に首を傾げる。
「それと…
その夢、まだ他にもおかしな所が有るよな」
私は言葉を続けた。
「え?モザイクの他にか?」
吉岡が怪訝な表情をした。
「うん。もちろん、モザイクも変だが…よく考えてみてくれよ。
私も吉岡も『墨田商店の思い出の光景』って、
二匹の猫と墨田の婆ちゃんで『ワンセット』になっていないか?
だから普通、あの頃の思い出が夢に出て来るとしたら『猫達だけ』が出て来て『お婆ちゃん』が出て来ないってのは、何かおかしくないか?」
「う、うん!た、確かにそうだな!!」
「吉岡…。
どうも、私には猫達がお前に対して『何かメッセージを伝えようとして』自ら、お前の夢に出て来たような気がしてならないんだよ。たがら、お婆ちゃんは夢に出て来なかった」
『…オカルト否定派の私らしからぬ発言だな…』
と思いながらも、私は自分の考えを述べた。
「…なあ…沢村?」
と、吉岡が少しの沈黙の後、不意に私の顔を見詰めて言った。
「突然だけど、明日の土曜日って…ヒマか?」
「何だ、いきなり。まあ、ヒマと言えばヒマだけど…」
「ちょっとさ。明日、行ってみないか?墨田商店」
「…え?」
「いやぁ、そう言われると、なおさら気になってさ。な!行ってみようぜ!」
見ると、吉岡の両目がキラキラと輝いている。
私は、それに応えた。
「うん!確かにそれは私も同感だ!よし、行ってみるか!」
「そう来なくっちゃ!じゃあ、ここは俺がおごるよ!次もチューハイで良いだろ?!」
と、吉岡は嬉しそうに笑いながら私の注文を聞かずにチューハイを二つ、店員に注文した。
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