0人が本棚に入れています
本棚に追加
「昔はってことは今は違うの?」
彼女は笑顔で堂々と話してくれる。
「今は隠してないよ。だって自分を偽るってことは自分を殺すってことだよ。そんなのはダメだよ。私は私として生きないと意味がない」
そうだよな・・彼女は強いな。ちょっと振られたくらいでウジウジしていた俺とは大違いだよ・・
真木紅麗・・ショートカットで小柄な彼女・・俺の好みとは正反対で、決して異性として好きになることはないと思う・・けど・・彼女は素敵な女性だと思う。
「真木さん。俺と友達になってくれないか?」
フワフワした感じで訳も分からず高揚した俺は・・気がつくとそう言っていた。
「こんな変態でよければいいわよ」
彼女は少し驚いた表情をしたけど笑いながらそう答えてくれた。
ブッチャーは白い彼女とお別れの時間が来たのか、名残惜しそうに頬を擦りあった後にその場から去っていこうとする。
それを見て俺と真木さんは、ブッチャーに付いて行く為にベンチから立ち上がる。
ブッチャーの背後には、沈みかけた夕日が綺麗なオレンジ色で発光している。
そのオレンジの光の中に溶け込んでいくように、真木さんは歩みを進めていく。真木さんの体の輪郭がぼやけていき・・完全に夕日に溶け込んでいってしまった。その光景を見た俺はその一瞬で何か自分の中で小さい変化が起こったような気がした。それは具体的には説明できるものではないし、言葉にできるものでもないが確実に実感するものだった。
ブッチャーと真木さんに置いてかれた俺は慌てて追いかける。そして走り出した今のこの瞬間・・
俺はそれが何かの始まりのような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!