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そんな話をしていると、トコトコと歩いていたブッチャーがいきなり走り出した。
それを予測していたのか真木さんも走ってそれを追いかけ始める。遅れて俺もそれに付いて行った。
歩道を軽快に走っていたブッチャーは、あろうことか神社横にあった長い階段を登り始めた。
普段から運動不足気味の俺には、その階段は強烈にきつかった。
「ハッ・・ハッ・・ま・・まじか・・」
真木さんはスポーティーな見た目通り何か運動をしているのか、それほど苦も無く走り登って行っている。
「頑張って!もう少しだよ」
彼女がそう言ってくれなかったら最後まで付いて行けなかったかもしれない・・
地獄の苦しみで上りきった階段の先は小さな公園だった。公園といっても綺麗に整備されてるものではなく・・平たく言うとちょっと開けた空き地にベンチが置いてあるだけの場所かな。
「ハァーハァーもうダメ・・死ぬ・・」
「若いのに情けないわね。ちょっとくらい運動しといた方がいいよ」
もっともな意見をありがたく頂戴して俺はベンチに座り込んだ。
そこに彼女が自動販売機でお茶を買って持ってきてくれた。それを受け取ると絞り出すような声でお礼を言う。
「あ・・ありがとう・・」
そのお礼に対して軽く笑顔で答えてくれる。
ブッチャーは公園の真ん中で座り込んで何やら寛いでいるようだ。
俺は何とか息が整ってきてその姿をお茶を飲みながら眺めている。
「アイツはあんな所で何やってるんだろう」
真木さんは俺の疑問に対して意地悪く笑うと楽しそうに話す。
「それはもう少ししたらわかるよ」
その言葉と同時にブッチャーが何やら動き始めた。
にゃーにゃー
何やら猫の鳴き声が林から聞こえて来る。それに応えるようにブッチャーも短く一泣きする。
程なくすると、林から白い細い猫が現れた。それを見たブッチャーは嬉しそうに近づいていく。
「アイツもしかして・・」
ニコニコしながら彼女が説明してくれる。
「そうなの。彼はここでいつもあの子とデートしてるのよ」
「なんてこった!なんかすごく裏切られた気分だよ」
彼女は笑いながら俺に言ってくる。
「どうしてそうなるのよ。彼はデートしちゃーいけないの?」
「だってイメージがそうだろう?あのブッチャーが昼間からデートって・・そりゃないよ」
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