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真木さんはそれを聞いてゲラゲラ笑いながら、自分のカバンをゴソゴソして何やら取り出した。
「何それ笛?」
取り出したのは綺麗な光沢のあるオールドグリーンの笛だった。
「これはポケットサックスって言ってサックスに似た音が出る笛よ」
「へーそうなんだ」
「ブッチャーはここでしばらくいるからね。いつも待ってる間にこれを吹いてるんだ。あまり上手くないけど聞く?」
「ぜひ聞かせて欲しい」
彼女の演奏は思った以上に素晴らしかった。
上手い下手なんて判断はどんな楽器の経験も無い俺にはわからないけど・・彼女の演奏には何か心に響くものがあった。しかしポケットサックスって初めて聞いたけど結構好きかもしれない・・
「すごく良かったよ。下手なんて謙遜もいいとこだよ。その曲って、どこかで聞いたことあるんだけど・・なんだっけ?」
「タイトルはわからないんだけど昔見た猫のアニメの主題歌だよ」
「そーだそーだ・・アニメだよね・・」
その後。二人であーだこーだと話し合いながら必死に思い出そうとしたけど・・結局思い出すことはできなかった。
「へぇーそれは豪快に振られたわね」
そしていつの間にか俺は、彼女に先日の告白話をしていた。なぜこんな話になったんだろう・・
「真木さんは告白して振られたことある?」
彼女は何の躊躇もなく答えてくれる。
「残念だけど告白すらしたことないわ」
「じゃー男と付き合ったことは?」
それに質問に対しては俺の想像の斜め上の答えが返ってくる。
「男はないけど女の子はあるよ」
「え??」
俺は驚きで少し硬直してしまった。
「え・・と・・何かごめん・・」
そんなしどろもどろの俺にあっけらかんと彼女は話してくれる。
「別にいいよ。私はねバイセクシャルなの」
「バイセクシャル?」
「えーと簡単に言うと男も女も好きになれる便利な人種よ」
そうなんだ・・ちょっと今までそんな人と接したことないからな・・
「昔はね・・それを隠してたんだ・・それを知られると・・何か自分の周りが変わってしまうんじゃないかと思って怖かった・・」
それを聞いて俺は反応に困ってしまった。今までそんなことを考えたこともないから。
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