次の快速列車が来るまで

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 この駅で乗車した人たちは皆、疲れ切った表情で改札口へと向かい、椅子に向かう私たちの姿に気を留める人はいない。 「本当に久しぶりだね。何年ぶりだろう?」  うっ。これだけ親しげに話し掛けてくるという事はやはり知り合いですか?  しかしこんなイケメン相手にあなたの事など知らないとでも言おうものなら、プライドを傷つけてしまいそうです。 「あ、あの」  彼の外見を改めて見てみると、私と同年代か少し上くらいと言ったところ。もしかしたら彼は小さい頃に会った事がある遠い親戚のお兄さんかもしれない。  そういえば昔、駅で知らないおばさまに親しげに話し掛けられた事があったわ。私が幼き頃に会っていたけれど、忘れている親戚かもと思ってしばらく様子見しながら話を合わせた事がある。  うん、きっとそれだね。とりあえず話を合わせてみよう。何よりも次の電車が来るまで待たなきゃいけないわけだし。  私は素直に椅子に腰を下ろした。  まだ日中は暖かさが残る秋の夜とは言え、プラスチック製の椅子は少しひんやり身を冷やす。 「えーっと、そうですね」 「十数年ぶりとかかな」 「えーと。そう、そうでしょうか」 「……何で敬語なの?」  ……同年代設定らしい。そして十数年ぶりとなると私が中学の頃の話になる。いくらなんでもその年齢に親戚だと紹介されたら、こんなイケメンは覚えているはず。ということは親戚ではないよね。  そう言えば、知らないおばさまに話し掛けられたのも結局、途中であらごめんなさい人違いだったわと言われたっけ。 「ひ、久しぶりだから」  目を泳がせながら言い訳にならない言い訳をしてみると、彼はくすりと笑った。 「仕事帰り、だよね? 今、何しているの?」 「普通の会社員よ」  ここはやっぱり私も聞き返す方がいいのでしょうね。しかし名前が分からないし、どう呼ぼう。うーん、よし。これから彼の事を『あなた』で通すことにしましょうか。 「……あなたは?」 「システムエンジニアだよ」  おぉ。何だかお洒落な響きの職業です。頭も良さそう。 「難しそうね」 「うん。そうだね。でも充実しているよ」  システムエンジニアなる職業が具体的にはどのようなものか知らないけれど、仕事においてもリア充しているらしい。  ……実に羨ましい事です。  一つため息を吐いていると彼はさらに尋ねてきた。
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