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◆
「ふ、二人とも交換は終わったねぇ?」
ひーな先輩の様子がおかしい。笑顔が引きつっていて、声も少し上擦っている。あの様子だと、もう負け決定か?
いや……勝負は最後までわからないぞ。
というのも、僕の手札がツーペアだからだ。この役で勝てるのは、ワンペアか役ナシのブタのみ。さっきよりも勝機は薄くなった。
なにより不安なのは、さっきのゲームでダンゴムシ、もといヒロ先輩が負けた縁起の悪い役だということだった。
「じゃ、じゃあ、せーのでオープンね? せ、せーのぉ!」
ひーな先輩の震える声が部室に響いた。
一斉に三人ぶんの手札がオープンされる。
それぞれの役は……。
香名先輩 フルハウス(かなり強い)
僕 ツーペア(あんまり強くない)
ひーな先輩 ワンペア(弱い)
ひーな先輩が順当に負けやがったぁぁぁ! つまんねぇよ、このポーカー!
「ちょ、ちょっと待ってよぅ。仕組むのはよくないよぅ」
「ひーな先輩。それさっきヒロ先輩が使った言い訳ですよ?」
「うぅ……」
がっくりと肩を落とすひーな先輩。かわいそうだけど、ルールなんだから仕方がない。罰ゲームはやってもらわないと。
「観念することね。さぁ、ひーな。カードを引いて」
例のごとく、香名先輩がカードをひーな先輩に突き出した。
「うーん。じゃあ、これぇ」
ひーな先輩はしぶしぶカードを引き、テーブルの上に置いた。
そこにはこう書かれていた。
【ネコ耳を装着して男子を魅了しちゃうニャン!】
なんだって……?
お、恐ろしい。こんな罰ゲームがあるのか。まぁたしかに「可愛い」という点に関して言えば、女性の魅力を上げることに繋がるのかもしれないけれど。
「ねぇ香名ちゃん。これどうすればいいの? ネコ耳なんて部室にないしぃ――」
「あるわ」
「あるのぉ!?」
驚愕の声を上げたひーな先輩の眠たそうな目がばっちり開いた。
香名先輩は部室の奥にあるロッカーから、ネコ耳を取り出した。黒いカチューシャにネコ耳がついている。耳の外側は黒く、内側は白い。
「はい、ひーな。きっと似合うわよ」
「そ、そうかなぁ……」
ひーな先輩はネコ耳を受け取り、おずおずと頭に装着した。
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