Part1 やはりJK部に非日常を求めるのは間違っている

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「ありがとねぇ、二人とも」 「いいのよ。それよりも、お願いがあるんだけど」 「え? な、なぁに香名ちゃん?」  尋ねると、香名ちゃんの瞳がキラキラと輝いていることに気がついた。穢れのない、純粋なまなざしをわたしにびゅんびゅん送ってくる。  ううっ……今日は香名ちゃんの奇行と戯言に振り回される予感がするよぅ。 「ねぇ、ひーな。素振りしてみてもいい?」  香名ちゃんが鼻息荒くわたしの手を握ってきた。 「いいけど……室内だから気をつけてよぉ?」 「わかったわ。ヒロ」 「はいよ」  ヒロちゃんは持っていたバットを香名ちゃんに手渡す。  わたしとヒロちゃんは香名ちゃんと少し距離を取った。だって、ぶつかったら怪我しちゃうもの。 「九回裏でツーアウト。点差はナシ。ランナーは三塁ね。一打勝ち越しのチャンスという設定はどうかしら?」 「燃えるな。いいと思うぜ、香名」  ヒロちゃんが親指をグッと立てた。わたしは野球のこと詳しくないけど、その状況が盛り上がる場面だということくらいはわかる。  うん……まぁ、ただの素振りだから、設定必要ないと思うけど。  香名ちゃんは打席に立つ演技をしてバットを構える。軽く素振りをしてみたけど、ちょっと体の動きが変だ。ギクシャクしているというか、なんだか振りにくそう。 「おい香名。それじゃあ逆だろ」  ヒロちゃんが、香名ちゃんのバットを持つ手を指さした。 「えっ? 逆ってどういうことかしら?」 「バットを握る手のことだ。お前、右利きだよな? だったら、右手が左手の上にこないと上手く振れないだろ」  よく見ると、バットを持つ香名ちゃんの手は左手が上にきていた。  香名ちゃんはバットを持ち直して、再び素振りをする。へなちょこだけど、さっきのような不自然さはなくなった。  ヒロちゃんすごいなぁ。わたしはこういうの全然わからないや。
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