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「すごい! さっきより断然振りやすいわ。やるわね、ヒロ」
「当たり前だぜ。香名をホームラン王にするのがアタシの役目だからな。ちょっと思いっきり振ってみ?」
ヒロちゃんが香名ちゃんに提案した。ええー。この狭い室内で全力は危ないよぅ。
「ちょ、香名ちゃん。全力の素振りは危険だよぅ」
「何言ってるのよ、ひーな。私はホームラン王になる女よ?」
「よ、よくわかんないけど駄目ぇ! 危ないの禁止ぃ!」
わたしの制止の声を無視して香名ちゃんは片足を上げた。うう、もしバットが手からすっぽ抜けたりして、わたしたちや窓の方に飛んでいったらどうするのよぅ……。
「サヨナラ満塁ホームランよ――あっ」
あれ!? ランナーは一人じゃなかったっけ!?
そんなくだらないツッコミを飲み込んだ。
何故なら、香名ちゃんの手からバットが離れていったからだ。部室の出入り口のほうに飛んでいったことは幸いだけど、結構な勢いで飛んでいくのでかなり危険だ。
わたしが反射的に目をつむったとき、ドアが開く音がした。
「遅れてすみません。いやー中学生の妹の宿題なのに結構てこずっちゃって――」
ゴンッという鈍い音がした。
おそるおそる目を開けると、ドアの前でタマちゃんが倒れていた。近くにはバットもある。
もしかして、当たっちゃったの?
タマちゃん……なんでそんなにタイミング悪いのぉぉぉ!?
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