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片手を掲げたまま、微動だにしない晃太郎。涼しい風だけが屋上を駆けていた。
時間にして20秒。それでも翔介には長く感じた。
「・・・あのー、」
「来たぞ!」
翔介の言葉を遮って、晃太郎が振り返る。
いったい、何が来たのか。翔介が訝しげにしていると、風が、強くなった。
途端に、黒く大きな影が地を這った。何かが、来た。それが何なのか、翔介はすぐには理解出来なかった。
「紹介しよう。ピヨちゃんだ。」
旋風と共に屋上に降り立ったのは、巨大な鳥であった。鷲のような、巨鳥。翼長は10mはあるのではないだろうか。
翔介は言葉を失った。これ、霊とちゃうやん。
だが、驚きは続く。
「ピヨちゃんと呼ぶんじゃねえ。仕事か?」
「・・・喋った。」
鳥が喋った。もはや、霊とかの話ではない。翔介からしたら、喋る怪獣だ。
「ああん?喋ったら何なんだよ!」
「落ち着け、ピヨちゃん。ピヨちゃんはなぁ、二百年以上生きてる、鷲の変化なんだ。俺らの力になってくれるから、仲良くな。」
二百年?変化?よくわからないけど、自分が救霊する方向に話を持っていこうとするのは阻止せねば、と翔介は思っていた。
「ほら、翔介くんも自己紹介して!」
「え?あ、あの、笠根翔介です。」
「空斬(そらきり)だ。人間がつけた名だがな。って、仕事でよんだんじゃねぇのかよ!」
空斬が羽毛を逆立てて晃太郎を威嚇する。しかし、晃太郎は意に介せずといった風だ。
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