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尼崎晃太郎は走っていた。県道沿いの歩道をただ、ひたすら走っていた。
全身は汗だくで、息も絶え絶え。しかし、目的地はすぐそこだ。県道に架かる歩道橋が見えた。それが晃太郎の目的地であった。
歩道橋を視界に確認すると、次に晃太郎は腕時計を確認した。
「・・・ギリギリじゃねぇか。」
時刻は17時50分。晃太郎は残る力を振り絞って足を速めた。
ちょうどその時、晃太郎の前方を男子高校生が歩いていた。歩道橋の上には、まさに今から飛び降りようとしている女子高生がいた。
晃太郎が男子高校生を追い越したとき、男子高校生は歩道橋の上の女子高生に気づいた。
「えっ?あっ!危ないっ!」
女子高生は歩道橋の欄干に足を掛け、飛び降りる寸前だ。男子高校生から距離にして100m。男子高校生も晃太郎の後ろを走り出す。が、
「あ~、ダメだ~。間に合わなかった~。」
「ええっ!?」
時計を見ながら、晃太郎は立ち止まった。店じまい、解散!といった投げ槍感。
男子高校生は憤慨した。「まだ間に合うだろ!」そう叫んで、晃太郎を追い越し、走った。
しかし、女子高生はすでに宙に体を投げ出すところまできていた。物理的に引っ張り上げるのは不可能である。が、男子高校生は諦めなかった。
「命を、粗末にするなぁーーーっ!」
歩道橋の階段の手摺に足を掛け、男子高校生は宙に飛んだ。手を伸ばし、女子高生目掛けて、飛んだ。
が、何者かに足を掴まれた。
「命を粗末にするな。」
晃太郎は男子高校生の足を掴み、グイと歩道橋へと引っ張り戻した。
ドサッと男子高校生は階段へ落下した。頭を打ったのか、そのまま動かなくなってしまった。
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