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晃太郎の返答は、翔介に知りたいことを的確に伝えた。頭の回転の速い人なんだ。翔介は感心した。
だが、翔介にはもう一つ気になることがあった。
「あの、尼崎さん。」
「下の名前でいいよ。晃太郎。」
「あっ、はい。晃太郎さんはどうして、途中で諦めたんですか?あの時、俺を追越してて、そのまま走ればあの子が飛び下りる前に、せめて声が届く位置には間に合ったはずです。・・・と、思いました。」
「うーん。」
伏し目がちな翔介を前に、晃太郎はバツが悪そうに頭を掻いた。
「まぁ、素人にはわからんだろうけど。今後の為に、一応説明しておこう。まず僕には彼女が飛び下りる時間がわかっていた。そして、霊への干渉というのは実にデリケートなものなのだよ。」
翔介は真っ直ぐに晃太郎の瞳を見ながら、フンフンと頷いた。
「大声で遠くから名前を呼んだところで、こっちを気にしちゃもらえない。まぁ、ある程度近くまで行ければ、いくらでもやりようがあるがな。今回は時間が無さすぎた。」
「でも、時間、わかってたんですよね?なら・・・」
「あれでもチョッパヤだったんだよ!なんせ上のヤツらと来たら、ケースバイケースってのをしやしねぇ。この案件ともう1セット案件があってな。どっちも上で処理してから・・・て、仕事のことはいいか。とにかく!俺は15分以上疾走して現場に着いたが間に合わなかった!以上!」
「あ、ありがとうございました。」
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