2 高層街の夜

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「ジョッシュは以前にもこの様な場面に出くわした事がある…」クラウディオが訊いた「って言うか今の様な激しい逮捕劇は高層タウンではよくある事なのかい?」 「ああ、こっちでの勤めが長くなると否が応でも見てしまう、日常茶飯事と言う訳ではないけどね。今、ここにいる連中もその大半は経験者だと思う」ジョシュアが応える 「そうなんだ、それでみんな声ひとつあげる事なく黙って見ていたんだね。それはそれで気味が悪いね」クラウディオが言う「まるで機械に支配されてるみたいだ」 「直に慣れるさ、それとも中層階の仕事に戻して貰うか?」ジョシュアが真顔で尋ねる 「いや、折角巡って来たチャンスだから目一杯頑張るよ…ラウラのためだけじゃなく自分のためにも」間髪入れずクラウディオが返す 「ああ、その方がいい」 「でもジョッシュ、高層タウンって話に聞いたほど魅力のある街に思えないんだけど」クラウディオが気になっていた事を訊ねた「都会的な華やいだ場所は殆んどないし、何処に行っても人間よりもロボットとか機械の方が多いし」 「さっき当局のETBが着いた時に開いた大窓から外を見なかったのか?」ジョシュアは笑いながら応える「街はずっと上に伸びて行ってるんだよ」 「確かに言われてみれば真夜中なのに上の方から眩しいほどの光が降り注いでいた様な気がする…」 「高層タウンって言ってもここは最果ての地だ、夢を持って上を目指したらどうだ?」 ジョシュアのこの言葉にクラウディオは大きく頷いた。 その時、胸の中でもやもやしていたものが一掃された事によって、それまで以上の熱い情熱がクラウディオの中で沸き起こりつつあった。    
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