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突然大きな音と共に天井が崩れ落ち、視界は埃に支配される。連鎖的に崩れる天井と壁は彼ら二人に襲い掛かり、思わず彼は由依を残して飛びのいた。瓦礫と共に一際大きなものが落ちてくる。塵埃の中で見たそれは血にまみれた巨大な金属の足だった。
人間の足よりも何十倍も大きいそれは、まるで西洋の甲冑のようだった。隙間からは多量の血と、菌類にも似たものが見える。その菌類じみたものは甲冑すべてのパーツと結びつき、臓物を連想させるような悪臭を放っていた。
「由依!」
彼は僅かな隙間を潜り抜け、彼女を探す。幸いなことに彼女はすぐに見つかり、けがもないようだった。
「でるよ。立って!」
彼は彼女の手を取り、急いで瓦礫の下を潜り抜ける。転がる破片に由依が躓く。助け起こそうとした時、薄れゆく塵埃の先に先ほどの甲冑が動いているのが目に入った。うつぶせに倒れていたそれの背中が開き、中から寒気を覚える程おぞましい菌類じみた塊が膨らんでくる。その塊は胎動にも似た、天を突き上げるような動きを数回した後、血と共にナイフを持った人の手が中から突き破った。
一度戻した両手で菌類の塊の穴を広げ、甲冑の縁を掴む。そして中から全身血にまみれた一人の女が姿を現す。彼女は素早く地に降り立つと、そうそうに彼らの存在に気づいた。
「動くな」
銃を取り出し、彼らに向ける。彼は驚き、由依とつないだまま両手を上げた。彼女は銃を下げることなく、転がる瓦礫を靴でどかすように彼らに近づく。手が届く距離まで近づくと、それぞれに手錠をかけた。
「食料はあるか?」
彼のポケットを服の上から探りながら、強い口調で言い放つ。崩れた天井のさらに遠くからプラント内すべてに届く警報が響き、どこからでも見える中央の塔には敵性存在が内部にいることを示す赤い凶星が明滅していた。
「ねぇ、何があったの?」
「敵が家に落ちてきて、中から人が出てきた」
彼女は僅かしかなかった米の容器を見つける。それを手に甲冑を上ると、菌類じみたものへと注ぎ込んだ。しばらくその様子を眺めていたがそれだけでは満足いかなかったらしく、再び彼らの前に降り立ち銃口を向けた。
「もういい、お前立て」
彼女は彼の頭を掴み、無理やり立たせる。由依が彼の名を叫んだが、構わずそのまま甲冑の上へと歩かせた。
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