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弾丸の嵐は甲冑を削り、内部にまで到達する。菌類じみたそれにめり込み内部で止まる。血液のような赤色の液体が吹き出し、すぐにその傷はふさがっていく。強力な機銃の反動でワイヤーが大きく揺れた。由依がいる菌の塊にも弾丸がおよび、貫通することなく中で止まった。激痛が彼を襲う。
痛みから逃れようと、彼はワイヤーを掴み腕の力だけで一気に登り切る。そして三枚羽の本体を掴み、握りつぶした。ワイヤーを使い大きく体を揺らし、二機目を蹴り壊した。機銃は止まり、代わりにワイヤーが伸びてくる。落下しながら彼は身を翻し、伸びきったワイヤーを掴み四機目へと叩きつけた。
三枚羽の残骸と共に幹線道路に着地し転倒する。コンクリートで舗装されているそこに、彼を中心に大きくヒビが入った。すぐ傍に三枚羽のメインローターの破片が突き刺さる。先ほどまで走っていた自動車は一つもなく、代わりに四脚を備えた戦車が道路を封鎖していた。
生物じみた複眼が彼をとらえ、同時に両肩の巨砲が向けられる。蜘蛛のようなその戦車は速力を犠牲にし、走破性を高められている。プラントという限られた空間内での使用を想定しているため、密集した建物が多い以上無限
軌道ではかえって邪魔になってしまっていた。
巨砲が炎を吐き出し、回転しながら砲弾が飛んでくる。頭部に向かって真っすぐ向かってくる砲弾が、彼にはゆっくり見えていた。脳が警戒を発し、回避しようと足に向かって電気信号を送る。だがその信号は途中で本来なかった神経に奪われ、何倍もの速度となって巨体の筋肉を刺激する。砲弾は甲冑のパーツ一つを吹き飛ばし、後方の建物に着弾する。彼は二つ目の砲弾が発射される前に、三枚羽のローター片を素早く引き抜くと急いで脇道に飛び込んだ。
巨体には狭い倉庫街の脇道を走り抜ける。姿こそ見えなかったが上空からは何機もの三枚羽が追跡してきている。その証拠に、時折彼の進もうとする道を遮るように弾丸が降り注いだ。
気づくと彼はアリーナの入り口前にいた。今の巨体でも難なくは入れるほど大きな資材搬入口を抜け、彼は暗い通路を非常灯の明かりだけを頼りに進んでいく。三枚羽の羽音は聞こえるものの、内部にまでは来ていない。それでも今の位置では外から見えてしまうため、彼はさらに奥へ進んだ。
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