3 ぐちゃぐちゃ

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3 ぐちゃぐちゃ

バイトがお休みの日の午後、ネコさんはフクロウさんのお店の奥で、編物を習いました。 まずはマフラーからです。二本の棒針を使って、サクサク編んでいくのです。 ネコさんは、ルビーのような赤の毛糸を選びました。 「わあ、楽しい!」 ネコさんは楽しくて、仕方がありません。 ずんずん編みます。 どんどん編みます。 でも、ネコさんですから、気まぐれなんです。飽き性なんです。 お仕事だってすぐ飽きて、次々替えているネコさんなんです。 今のカフェのお仕事だって、そろそろ替えたいと思っているのです。 同じ編み方をひたすら繰り返すのは、つまらない。 編んでも編んでも、四角がちょびっと伸びるだけなのも、つまらない。 10段も編まないうちに、ネコさんの編み目は色んな形に変身し始めました。 段ごとに目の数も違います。 お店にステキな毛糸がたくさんあるので、色々替えてみたくもなってしまいます。 だから、あらら。ネコさんのマフラーは、 太くなったり細くなったり。 妙な穴が開いていたり。 なぜか二股に分かれてしまったりまたくっついたり。 糸もきまぐれで替えてしまうから、色も厚みも肌ざわりも、もうぐちゃぐちゃ。 お店でお客様のお相手をしていたフクロウ店長は、手があいたのでネコさんの様子を見に来てびっくり仰天。 「ネコさん、このマフラー、どうやって使うの!?」 夢中で編んでいたネコさんは、ハッとしてマフラーを持ち上げてみて、びっくり。 そして、がっかり、しょんぼり。めそめそしながら言いました。 「あたしには、店長さんみたいな根気もセンスもないんです。編物なんか向いてないんだわ。いいえ、あたし、何をやってもダメなんです」
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