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6 きゅーと
午前10時の開店時間を、ネコさんはフクロウ編物店のドアの前で待っていました。
「あらら、ネコさんおはようございます」
ネコさんに気付いたフクロウ店長は、まだちょっと早かったのですが、急いでドアを開けました。
「昨日はどうも」
「昨日はありがとうございました!店長さん、見てください」
店の中に入ったネコさんは、コートを脱ぎました。すると・・・
「まあ!」
フクロウ店長は目も口も大きく開けて、またまたびっくり仰天。しばらくは口がきけない様子でしたが、やがて力を込めていいました。
「すばらしいわ、ネコさん!やっぱりあなたはセンスが良い。天才よ」
フクロウ店長は近づいて、しげしげと、お花畑になったドレスを眺めました。
フクロウ店長にはわかりました。ネコさんは、決して適当にお花を並べているわけではありません。作ったお花を全種類使っているわけではなく、色味や質感の合うお花たちを組み合わせているのです。ドレス全体にまんべんなく咲かせているわけではなく、襟元にぎゅっと集め、他の場所にははらりはらりとこぼしています。その配分が絶妙でした。
ネコさんは目をきらきらさせて言いました。
「店長さん、あたし昨日、晩ごはん食べなかったんです。一睡もしなかったんです。ごはんを食べるのも、寝るのも、忘れていたんです。こんなに何かに夢中になったのって、初めてなんです」
「すごいわね!ネコさん。食べるより、寝るより好きなこと。そこにあなたの才能が隠れていると思いますよ」
フクロウさんも目をきらきらさせて言いました。
「ネコさん、私のニットを飾ってみない?もちろん、私のオリジナルのシンプルなニットが好きな人もいます。でも、こんな風にかわいくて楽しいニットが好きな人も、たくさんいると思うの」
「いいんですか?」
ネコさんは空に飛びあがるような気持ちでした。
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