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「サンタさん着たの初めてなの」
「うん、初めてであってほしいよ」
「似合う? 蘭さんがね、くれたんだよ」
少し長めの袖口を両方口元へもっていって、嬉しそうにふふふと笑う凛。ねぇ、どんだけ可愛いの。こんな凛が見られるなんて両手を上げて喜びたいけど、わけのわからない罪悪感が過る。蘭のやつ何てものあげてんだよ。
「可愛いよ。似合う似合う」
どうしても邪な見方をしてしまうため、素直に一緒に喜んではあげられない。まあ、じっくり見させてはもらうけど。せっかくのチャンスだからね。
そんな下衆な感情を悟られないように、そっと頭を撫でる。できることならこのままベッドに引きずり込んでしまいたいが、サンタの格好を嬉しそうにしている子供みたいな凛を見ていると、とんでもなく自分が悪い大人に思えてくる。
「よかったー。蘭さんがね、洋がきっと喜んでくれるよって言ってたから、楽しみだったの」
「そうなんだ。蘭がね……」
いやいや、悦ばせるって違う方だよね? 確信犯だよね? お姉さーん! からかわれてるのか、素直に喜んでいいのか、それさえもわからないまま暫くお互いに玄関に立ち尽くした。
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