壊れる日常と一握りの希望

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相変わらず無機質な声であったが、そこに彼女の覚悟が滲み出ている様な気がした。 「あと、あなたに託す価値が有ると思ったからよ」 そう言い終わるが早いか、ヨミの姿は空気に解ける様に消えてしまう。 「ヨミさん……。俺、やります。琴葉ちゃんを助けてみせます」 ヨミの居た辺りに語りかける様に景壱は言う。 「……景壱さんですか? 上着も着ないで何してるんですか?」 リリーがピンクのゆったりとしたパジャマの上に半纏を羽織り、玄関のドアから半分だけ姿を覗かせている。 「上着……。いや、あの、月が余りにも綺麗だったから思わず外にとびだしちゃって」 そう言えばヨミに上着を持って行かれたな……、と思いながらも、慌てて景壱は誤魔化した。
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